蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「なんだ、相変わらず色気のない格好だな、お前?」
「・・・」
「まあいい。ヘンに着飾って来られるよりはマシだ。さあ、乗れ」
卓海の言葉に、絢乃は恐る恐る手を伸ばした。
・・・後部座席のドアに。
その手を卓海がすかさず掴み、ぐいと引き寄せる。
「どこに乗ろうとしてんだ、お前」
「どこって、車に・・・」
「オレはな、道具はすぐ手の届くところに置いておきたいタチなんだよ。・・・ってか、何考えてんだお前? さっそくペナルティ食らいたいのか?」
卓海はその長い睫毛の奥の美しい瞳で、ぎろっと絢乃を見る。
・・・その、鬼のような鋭い視線。
絢乃はヒィと背筋を強張らせた。
「イエ、そんなことは・・・」
「いいから乗れ。早くしろ」
言いながら、卓海は助手席のドアを開けて絢乃を無理やり押し込める。
・・・前のセミナーの時のようだ。
絢乃はがっくりと肩を落としながら、助手席のシートベルトをカシャッと留めた・・・。