蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
昼食の後、岩場に降りた二人は、波打ち際の方へと移動した。
岩場は打ち寄せる波に濡れ、陽の光にきらきらと輝いている。
前を歩いていた卓海が、ふと絢乃を振り返った。
「おい、濡れてるところは歩くな。滑るぞ」
「あ、はい・・・」
と言ったのも束の間。
苔の生えた岩場を歩いていた絢乃は、ずるっと体勢を崩してしまった。
その瞬間。
ぐいっと腕を引かれ、絢乃は顔を強かに弾力のある何かにぶつけた。
・・・至近距離で香る、甘く透明感のあるフゼアの香り。
かろうじて転倒は免れたが、ふと気が付くと、腰の後ろにも腕が回っている。
「・・・っ!」
どうやら卓海がとっさに体を支えてくれたらしい。
カッと頬を染めた絢乃の頭上で、卓海がはぁと息をつく。