蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
6.ただの道具?
夕陽が海岸線を橙色に照らしている。
絢乃はデュアリスの助手席で、窓の外に広がる景色を眺めていた。
しだいに江の島が遠ざかっていく。
・・・鬼と一緒ではあったが、なんだか楽しかった。
ような気がする。
それにしても。
なぜ卓海は、自分に『オレの女になれ』などと言ったのだろうか。
自分より綺麗な子も可愛い子も、卓海の周りには溢れるほどいるだろう。
それに今日のように遊ぶだけなら、友人でもいいはずだ。
なのに、なぜ・・・。
考え込んでいるうちに、眠気が襲ってくる。
体を動かしたせいか、車の振動が妙に心地よい。
でも、この間それで失敗したばかりだ。
・・・忘れもしない、あのセミナーの日。
あれから雅人はどことなく絢乃を避けるようになった。
もちろん表面上は普通に上司として接してくるが、なんというか・・・この数か月間感じていた親密さがなくなったような気がする。