蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「すごいなぁ・・・」
自分が携わっているシステムが、こういう風に使われているとは・・・。
こういう現場を見ることができるのは、社内SEの醍醐味でもある。
あの受注データをこの機械が読み取って動いてるんだな、と思うと感慨深い。
などと思っていた絢乃だったが。
背後でウィーンと音がしたことに気付き、はっと振り返った。
・・・その瞬間。
「秋月、危ないっ!!」
突然横から腕を引かれ、絢乃はバランスを崩しつんのめった。
次の瞬間、ドスンと額を何かにぶつける。
・・・ふわりと香る、爽やかでクールなグリーンノートの香り。
はっと顔を上げた絢乃の目に飛び込んできたのは・・・・
射竦めるかのような鋭さを帯びた、雅人の切れ長の瞳。
その距離の近さに絢乃は一瞬ドキッとしたが、次の瞬間、さーっと顔から血の気が引いていった。
───マズイ。
後ろをちらりと見ると、自分がいた場所を自走台車がすいーっと通り過ぎていく。
・・・危なかった。
と思った瞬間、絢乃の頭上から雷が落ちた。