蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
と思わず言った絢乃に。
卓海はその目を細め、うっすらと笑った。
その、美しくも黒い微笑み。
「あぁ、期待してねぇよ。今のはただの遊びだ」
「・・・は?」
「どこまですればお前が起きるかなって思ってね」
卓海の言葉に、絢乃はカッとし手を拳に握りしめた。
───やはり、この男は最悪だ。
絢乃もキスした経験がないわけではない。
けれど遊びでキスできるほど、こういったことに関して割り切れるわけではない。
しかしこの男は違うらしい。
分かっていたことだ、と思う反面、なぜか心がズキッと痛む。
絢乃はため息をつきながら、窓の外を見た。
既に車は宮崎平のロータリーに到着しているようだ。
絢乃は自分の荷物を手にしながら、ため息交じりに言った。
「・・・はぁ。ホントに加納さんは、私のこと道具だと思ってるんですね・・・」
「何言ってんだ、今更?」
「・・・」