蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
7.執着
10分後。
マンションの玄関をくぐった絢乃は、エレベーターホールに向かいながら、気合を入れるように深呼吸した。
・・・なんとか、慧の追及をやり過ごさなければならない。
自室の前でドアに鍵を差し込み、ガチャっと回す。
そっと忍び込むように玄関に入った絢乃だったが、すぐにぱっと明りがつき、絢乃は思わずヒィと息を飲んだ。
「おかえり~、アヤ」
「・・・たっ、ただいま」
慧は玄関の脇の壁に寄りかかり、腕を組んでにっこり笑っている。
・・・その、いつになくにこやかな笑顔
というか、いつからここに立っていたのか。
絢乃は極力不自然にならないように注意しながら、靴を脱いで玄関を上がった。
「ごめんね、遅くなって」
「それはいいよ。友達とランチしてきたの?」
慧はにこりと笑いながら言う。
・・・なぜか、この笑顔が怖い。
絢乃はささっとリビングの方へと向かった。