蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「───貴様、一体何を考えてる!? 台車に轢かれたいのか!?」
「・・・っ」
突然の雷に、絢乃はビクッと身を竦めた。
雅人は至近距離で絢乃の腕を掴んだまま、鬼気迫る顔で怒鳴りつける。
銀縁眼鏡の奥のクールな瞳が、今は燃えるような怒りと絶対零度の冷たさで絢乃を見据えている。
───本気で怒っているその表情。
新入社員OJT以来の、本気の叱りモードだ。
・・・シマッタ。
久しぶりの雅人の雷に、絢乃はなすすべもなく身を竦ませた。
「自動倉庫が止まれば、一体どうなるか。お前も知っているだろう!?」
「・・・・ハイ・・・・」
絢乃は小声で言った。
・・・そう、自動倉庫がトラブルで止まってしまうと、データの再処理や配送計画の修正などを速攻で行わなければならない。
そしてそれは始末書レベルでは済まず、場合によっては経営会議で報告されてしまう。
自分もそれは良く知っていたハズなのに・・・迂闊だった。
というかウカツ過ぎた。