蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・終わりは近いって感じだね。おれもそろそろ、覚悟が必要かな・・・」
「え、なに、慧兄?」
「なんでもないよ。・・・そうだ、アヤ」
慧は気分を変えるように、テーブルの隅に置いてあった一枚の紙を取った。
それは・・・
「・・・ロールケーキ博覧会?」
「そ。今朝、新聞のチラシの中に混ざってたんだ」
慧は楽しげに言う。
絢乃は貰ってきた情報誌に同じ宣伝が載っていたことを思い出しながら、ちらりと慧を見た。
慧はこういったスイーツ系のイベントに目がない。
宮崎平に住んでいるからいいようなものの、池袋にでも住んでいたらナンダタウンに日参していただろう。
「ほら、明日は命日だろ? 墓参りのついでに寄ってみない?」
慧の言葉に、絢乃はしばし考え込んだ。
明日は慧の母・昌美の命日で、二人は毎年直近の週末に墓参りに行っている。