蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
八章
1.スイーツの楽園
翌日の日曜。
絢乃は慧とともに護国寺へと向かった。
護国寺の駅を出、池袋方面へ少し歩くと墓地が広がっている。
仏花を片手に『秋月家』の墓の前に歩み寄った二人は、墓前にコスモスの花束が置かれていることに気付き、首を傾げた。
「・・・あれ?」
コスモスは、慧の母・昌美が好きだった花だ。
しかしそのことは、慧と絢乃、そして妹であった時世しか知らない。
時世は今アメリカにいるため、ここに来たとは考えられないのだが・・・。
となると、一体誰なのだろうか。
「まだ新しいな。ということは、今日が命日だと知ってる人だろうな・・・」
慧は不思議そうに言いながら、持ってきた仏花を手早く手向けた。
軽く水をかけ、墓石の上に落ちている枯葉や塵を落とす。
二人は軽く墓の掃除をした後、手を合わせ、墓地を後にした。