蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・」
「・・・アヤ?」
「・・・」
「どしたの、アヤ?」
慧が歩きながら、心配そうに顔を覗き込む。
絢乃ははっと顔を上げ、慧を見た。
・・・その、心配そうな表情。
絢乃は慌てて少し笑った。
「ごめん、何でもないよ。・・・ロールケーキ、いっぱいあるといいね?」
「・・・?」
慧は怪訝そうに絢乃を見る。
絢乃は何でもない風を装いながら、前を見た。
・・・それは一つの可能性に過ぎないと思っても、一度頭に浮かんでしまうとなかなか消えない。
もし別れた原因が本当にそれだったら、自分はどうすればいいのだろうか・・・。
絢乃は忸怩たる思いを抱えながら、繁華街の中を慧とともに歩いていった。