蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
ナンダタウンに着いた二人は、さっそくロールケーキ博覧会の会場へと向かった。
ロールケーキ博覧会は『スイーツ共和国』なるエリアの中にあり、中に入ると日本各地の有名なスイーツ店が並んでいる。
そしてその一角に、ロールケーキ博覧会の会場が設えられていた。
慧にとってはまさにパラダイスだろう。
と思った絢乃の隣で、慧は目を輝かせて辺りを見回す。
「おれ、思うんだけどさ。この共和国をディズニーランドぐらいの規模でどっかに作ってくれないかな~。そういう会社があれば、おれ、喜んで投資するのに」
「・・・はぁ」
「立地と投資効果をちゃんと考えてやればわりといけると思うんだけどな。ディズニーランドみたいなマネジメントシステムは不要だけど、かわりにビジネスモデルを・・・」
慧は何やら考え込みながら呟くように言う。
絢乃は唖然とそれを聞いていた。
慧はわりとロマンチストというか、少年ぽい考えをすることがあるが、それを実現するための手法まで考えるから驚きだ。
頭が良いからなのか、それとも性格なのか・・・。
と思った時、慧が角の方にあった店を指差し、叫ぶように言った。
「あ! 『シュクレル』があるよ!」
『シュクレル』は通信販売で美味しいと有名な神戸のロールケーキ屋だ。
絢乃も一度食べてみたいなと思いホームページをチェックしたことはあるが、2か月待ちとのことで諦めた経験がある。