蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧に引きずられるように、絢乃は店の前へと連行された。
店のショーケースには、カットされたロールケーキが綺麗にデコレーションされて並んでいる。
「えっと、まずは王道にプレーンロールかな。あとは栗ロールと、抹茶ロールと、フルーツロールと、チョコロールと・・・」
「・・・ちょっと、なに大人買いしようとしてんの、慧兄?」
絢乃はさくっとクギをさした。
───予想はしていたが、既に暴走気味になっている。
冷やかに言った絢乃に、慧はとても残念そうな顔をした。
「えー。・・・大人買いってわけじゃ・・・」
「全種類買おうとしてたでしょ! それを大人買いって言うの!」
「えー。何個買おうと『大人』であることに変わりは・・・」
「ヘンな屁理屈言わないのっ!」
ぴしっと言った絢乃の前で、慧ははぁぁとため息をついた。
・・・その、あまりに切なそうなため息。
絢乃もはぁと息をつき、肩をすくめた。