蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・ちょ、ちょっと、慧兄・・・っ」
絢乃は慌てて言ったが、慧は無言のまま大通りの方へとスタスタ歩いていく。
行き交う人々が、二人の姿を物珍しそうに見る。
絢乃は恥ずかしくなり、下ろしてもらおうともがいた。
「ちょっと、下ろしてよっ、慧兄っ・・・」
「・・・アヤ、静かにして」
「大丈夫だから! ちょっと捻っただけだから・・・っ」
絢乃は叫ぶように言い、慧を見た。
しかし慧は聞こえていないかのように、速足で歩き続ける。
絢乃はしだいに集まる周りの視線に、体がかっと熱くなるのを感じた。
「下ろしてよっ、慧兄!」
「・・・」
「歩けるから! 大丈夫だからっ・・・」