蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
慧はくすりと笑い、窓の外に視線を戻した。
・・・その、どこか寂しげな横顔。
あれから慧は、こういう表情をすることが多くなった。
なぜなのかはわからないが・・・。
やがてタクシーはマンションの前に到着した。
慧が絢乃を再び抱きかかえ、玄関をくぐる。
部屋に到着した慧は、絢乃をそのままベッドの上へと横たえた。
絢乃の足に手早く保冷剤を当てた後、上着を脱いでバサッとリビングのソファーに放る。
「お前はここで休んでて。グラタンできたら持ってくるから」
「・・・え、大丈夫だよ。私も手伝う」
「ダメ! お前はベッドから出ないこと! いいね?」
───どうやら組合旅行の夜の再来らしい。
慧は踵を返し、キッチンの方へと歩いていく。
絢乃はその背を眺めながら、はぁとため息をついた。