蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
その日の昼過ぎ。
本社に戻った絢乃は、社食で『本日の鍋料理』を前にはぁぁと盛大なため息をついた。
絢乃の向かいでは、春美がなぜか楽しげな笑みを浮かべている。
「久しぶりの雷だったわねー。さすが鬼軍曹って感じ?」
「・・・うぅ・・・っ」
「でもさすが軍曹よね~。ちゃんと兵士のことは守るんだから。さすがだわ~」
春美は感心したように頷きながら言う。
春美は体育会系だからか、雅人のことを昔から尊敬している。
・・・卓海に対する態度とは雲泥の差だ。
絢乃は春美をちらりと見、口を開いた。
「いや、兵士になったつもりはないんですけど・・・」
モゴモゴと絢乃は言い、肩を落とした。
・・・雅人から久しぶりの大目玉を食らってしまった。
けれどあの時、雅人が傍にいなければ・・・どうなっていたか。
考えるだけで恐ろしい。
今頃、本当に倉庫に格納されてしまっていたかもしれない。