蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
ヒィィと思う絢乃の前で慧は包丁をシンクに置き、スタスタと絢乃の前へと歩み寄った。
問答無用で絢乃を抱き上げ、ベッドにぼすっと下ろす。
・・・しまった。
と体を強張らせ、横たわった絢乃の耳の両脇に、慧がとんと両手をつく。
ギシッという音とともに、ベッドが揺れる。
・・・至近距離で香る、甘く柔らかいウッドノートの香り。
慧の腕に囲まれる格好になり、絢乃は目を見開いた。
───逃げられない体勢。
慧はじっと絢乃を見下ろし、口を開く。
「・・・なんで今日に限って、お前は聞き分けがないの?」
「・・・っ」
「ベッドから離れるなって、言ったと思ったけど?」
慧の瞳によぎる、怒りの感情。
・・・マズイ。
どうやら自分は再び慧の逆鱗に触れてしまったらしい。
ヒィと息を飲んだ絢乃に、慧は唇の端でくすりと笑った。
「・・・あまり言うこと聞かないと、お前をベッドに縛り付けるよ?」