蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




慧は目を細めて笑い、背を屈めて顔を近づける。

すぐ真上にある、端整な白皙の貌。

・・・美しい瞳に揺らめく、微かな熱情。

この瞳を見ていると、まるで吸い込まれるように、何も考えられなくなる・・・。

絢乃はぼうっとした頭で、掠れた声で言った。


「・・・縛り付けて、どうするの?」


絢乃の言葉に。

慧は一瞬の沈黙の後、くすっと笑った。

・・・その、凄艶な美しい微笑み。

絢乃は思わず息を飲んだ。


「そうだね。・・・お前が想像もしないようなことを、ひと通りしてあげようか?」

「・・・え?」

「気が狂うかもね、お前?」


慧はその形の良い口元に笑みを刷き、じっと絢乃を見つめる。

───大人の男の色気を帯びた、その瞳。

絢乃の全てを掠め取ろうとするような、強引な瞳。

絢乃はなぜか胸がバクバクするのを感じた。

慧のこんな表情は、見たことがない。


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