蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「た・・・例えば?」
と言った絢乃に。
慧はしばし考えるように首を傾げた後、口を開いた。
「そうだな。例えばデータベースの取説を朝から晩まで枕元で読み聞かせてやるとか?」
「・・・」
「もしくはキラートマトの続編を延々とお前の枕元で流し続けるとか。あまりのくだらなさに気が狂うかもね?」
「・・・」
確かにそれは気が狂うかもしれない。
というか本気でイヤだ。
絢乃ははぁと息を吐き、降参するかのように耳元の慧の腕をトントンと叩いた。
「わかったよ、慧兄。・・・ここにいるから」
「何か欲しいものがあったらおれに声をかけて。いいね、アヤ?」
慧は言い、そっと身を起こした。
ギシッとベッドが音を立てる。
その音になぜかドキッとしながら、絢乃ははぁぁと息をついた。
・・・怖かった。
でも、なぜかドキドキしてしまった。
しばらく慧の前では大人しくしていた方がいいかもしれない。
絢乃はごろりと俯せになり、枕に顔を埋めた。