蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───この一週間、必要なこと以外は絢乃と話さないようにしてきた。
絢乃と接すると、やはり自分はどうしようもなく絢乃に惹かれてしまう。
今も、絢乃の隣に慧がいると思うだけで胸に焼けるような嫉妬が広がる。
・・・本当は、絢乃の傍にいるのは自分でありたい。
けれど、それを口に出すことも、態度で示すことも許されない。
───忘れなければならない。
そう思えば思うほど・・・
どんどん、深みに落ちていくような気がする。
雅人は椅子の背に寄りかかり、前髪をかき上げてひとつ息をついた。
その時。
ピピピッという音とともに、携帯が鳴った。
会社の携帯ではなく、雅人の個人携帯だ。
どうやら金田からのようだが、勤務時間中に着信があるのは珍しい。
雅人は携帯を開きながら素早く立ち上がった。
通話ボタンを押した瞬間、携帯の向こうから金田の声が聞こえる。