蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
翌日。
絢乃は卓海に言われたとおり、弁当を持って中庭へと向かった。
中庭は四方をビルに囲まれており、小さいながらもちょっとした公園のようになっている。
「あぁ、絢乃ちゃん。こっちだよ」
奥のベンチの方から、卓海の声がする。
絢乃は声がした方に歩いて行った。
卓海は木陰に置かれたベンチに座り、にこやかな笑顔で手招きしている。
絢乃はベンチに歩み寄り、ベンチの端に腰を下ろした。
・・・と。
卓海がその腕を掴み、ぐいと引き寄せる。
「・・・ナニ遠くに座ってんだ、お前」
「・・・」
毎度のことながら、突然態度が変わるのは勘弁してほしい。
恐ろしいことに、だいぶ慣れてきてしまっているが・・・。
絢乃ははぁと息をつき、持ってきた弁当を広げた。