蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
絢乃は驚き、目を見開いた。
これは慧にレシピを教えてもらい、作ったものなのだが・・・。
絢乃は昨日の慧との会話を思い出した。
『・・・これはね。韓国風エビチリのレシピだよ』
『へぇ~・・・』
『ホントはコチュジャンを使うんだけど、ちょうど今切れてるから、代わりに豆板醤を使おうか。豆板醤だとちょっと大目に入れてもいいかもね?』
と慧はにこやかに言っていたのだが・・・。
今思い返すと、やたらにこやかだったような気もする。
青ざめた絢乃の前で、卓海はペットボトルのお茶を飲み、ギロッと絢乃を見た。
「・・・ネパール人向けの味付けか? これ」
「・・・ひっ、ヒィィッ」
「正に鬼殺しだな。お前、何かの組織の刺客か?」
絢乃は必死にブンブンと首を振った。
・・・マズイ。これはマズイ。
絢乃は恐怖のあまりうっすらと目に涙を滲ませながら、卓海を見た。
卓海はしばしそんな絢乃を凶悪な目線で見つめた後、はぁとため息をついた。
そのまま再び、殺人エビチリに箸を伸ばす。