蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
5.急転する運命
<side.雅人>
昼休み。
雅人は鞄を片手に、1階のロビーを歩いていた。
一昨日、金田から連絡を受け、雅人は父が搬送された病院に駆け付けた。
父は軽い脳卒中とのことで、幸い命に別状はなかったが・・・。
『・・・博人はしばらく、復帰は難しいだろう』
雅人とともに病床に駆け付けた祖父が、沈鬱な表情で雅人に告げた。
祖父・武人は北條グループの会長職に就いており、実質上の最高権力者だ。
武人はしばらく博人を見つめた後、雅人の方に視線を向けた。
『雅人。・・一か月後に北條商事で緊急役員会を開く。お前をそこで取締役に任命する』
『取締役、ですか?』
『一旦はな。そして来年の役員会で、お前を社長に推す。それまではわしが社長を兼務する』
『・・・!』
祖父の言葉に、雅人は目を見開いた。
・・・ということは。
背筋を強張らせた雅人をじっと見つめ、祖父は続けて言う。