蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
グランツ・ジャパンは東京・田町駅から徒歩10分ほどのところにある、15階建てのオフィスビルの8階にある。
グランツ・ジャパン全体の従業員は1500人ほどで、そのうちの400人ほどが本社社員だ。
絢乃も本社採用で、3年前の入社時からこのビルに勤務している。
フロアは南フロアと北フロアに分かれており、南フロアには人事・経理・総務・情報システム部などの本社部門が、北フロアには商品部や店舗事業部などがある。
そして絢乃がいる情報システム部は南フロアの真中にあり、その中は課ごとに小部屋に仕切られている。
「・・・うー、気が重いなー・・・」
絢乃は隣の部屋のドアの前で足を止めた。
ドアの上に掲げられているプレートは『第一開発課』。
絢乃はプレートを見上げ、思わずはぁとため息を漏らした。
情報システム部の下には、絢乃が所属している運用課の他に、第一開発課と第二開発課というシステムの開発を主に行っている部署がある。
課にはそれぞれ課長がいるが、絢乃が所属している運用課の成澤課長は、年明けから病気で入院している。
そのため、現在は第一開発課の北條課長が運用課の課長も兼任している。
絢乃はドアノブに手を掛け、ガチャっと回した。
恐る恐る、部屋に一歩入る。
その瞬間。