蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「会計基準変更の改訂ですか? 物流システムはかなり影響が出そうですからね」
「まぁ、それもあるが・・・別件の仕事もあってな」
雅人は少し疲れたような笑みを浮かべ、ちらりと卓海を見た。
・・・その、切れ長の瞳。
いつも眼鏡を掛けているのであまりそうは見えないが、雅人も相当、整った顔をしている。
卓海はふと絢乃のことを思いだし、探りを入れてみた。
「・・・そういえば。あのセミナーの日、絢乃ちゃんと夕飯に行ったらしいですね?」
卓海の言葉に、雅人は驚いたように目を見開いた。
まじまじと卓海を見、口を開く。
「・・・誰から聞いた?」
「それは秘密です。といっても、思い当たる人間はそう多くないと思いますけどね」
卓海はくすりと笑い、雅人を見た。
雅人は何かを思案するようにしばらく考えた後、静かに口を開いた。