蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
2.純也の忠告
14:03。
少し遅れて第二開発課の部屋に飛び込んだ絢乃は、肩を上下させながら脇の会議室に入った。
各課の部屋の脇には、小さいながら会議室と談話室がそれぞれついている。
絢乃が会議室に入ると、ホワイトボードの前の席に座っていた卓海がにっこり笑って口を開いた。
「絢乃ちゃん、3分遅刻~。あと2回遅刻したらペナルティだからね?」
「・・・すみません」
絢乃は軽く息をつき、空いている席に座った。
卓海はいつもはカルいイメージだが、仕事面ではそれなりに厳しい。
特に遅刻や書類提出期限などには厳しく、それらが重なるとペナルティが課せられる。
絢乃はまだペナルティを受けたことはないが、第二開発課の課員に聞いたところによると、『身の毛もよだつような恐ろしい目に遭った』らしい。
・・・社内で身の毛がよだつほど恐ろしいことって何があるのだろうか。
と少々興味もそそられるが、自分が当事者になるのだけは避けたいところだ。
そもそもどんな事情があるにしろ、遅刻したのは自分の自己管理の甘さが原因だ。
・・・とは思うが、しらっとした顔で椅子に座っている純也を見ると、なぜか胸にムカムカしたものがこみ上げてくる。