蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
6.Kiss and Kiss
翌週の水曜。
絢乃は池袋のセミナーで貰ったきた資料を片手に、物流システムと貿易システムのデータベースをチェックしていた。
まだ雅人や卓海から改訂についての話はないが、恐らく近いうちに話が来るだろう。
であればその前に、内容をある程度押さえておいた方がいい。
「うーん。前月に出荷したものが翌月に到着した場合、そしてさらにそれが返品された場合・・・」
絢乃はペンを片手に、近くにあったノートを開いた。
・・・頭の中で考えるより、図にしてみた方が理解しやすいかもしれない。
とノートにペンを走らせようとした、その時。
プルルッという音とともに、個人携帯にメールが届いた。
卓海からだ。
『15:00 給湯室に来い』
非常に簡潔なメールだ。
絢乃はヒィと背筋を強張らせた。
給湯室は休憩スペースから少し先に行ったところにあり、廊下の角にあるため死角となっている。
・・・行きたくないが、行かないとさらに恐ろしいことになりそうだ。
絢乃は肩を落とし、パタンと携帯を閉じた。