蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
卓海は絢乃を自分の胸の前へと引き寄せ、がしっと両肩を掴んだ。
───逃げられない。
絢乃は息を飲み、卓海を見上げた。
卓海はじっと絢乃を見つめ、その形の良い桜色の唇を開く。
「・・・慧が実の兄じゃないというのは、本当か?」
予想外の言葉に、絢乃は思わず目を見開いた。
・・・なぜ、卓海がそれを知っているのか。
といっても、卓海と慧は高校の頃からの知り合いだ。
何かのタイミングで知ってもおかしくはない・・・とは思うのだが・・・。
しかし、目前の卓海の様子はなんだか普通ではない。
怪訝に思いつつも、絢乃は軽く頷いた。
「ええ。従兄ですけど・・・?」
「・・・っ・・・」
絢乃の言葉に、卓海はぐっと唇を噛みしめた。
と同時に、絢乃の肩に置かれた手に力が籠められる。
・・・その、力強さ。
呆然と卓海を見る絢乃の前で、卓海は唇の端でクッと笑った。