蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「普通じゃねぇとは思っていたが、まさかこんな裏があったとはな・・・」

「・・・加納さん?」

「ありえねえよ。・・・お前も、慧もな」


卓海は黒い笑みを浮かべ、目を細めて絢乃を見る。

───その、性悪な魔笑。

けれどその瞳が、辛く切なそうに見えるのは・・・どうしてだろうか。

無言で卓海を見つめる絢乃に、卓海は冷たい口調で言う。


「この年になって実の兄妹でもない奴らが一緒に住むなんて、どうかしてるとしか思えねぇよ」

「・・・っ!」

「お前ら、気は確かか? ・・・それとももう、そういう関係なのか?」


卓海は嘲笑うように言う。

その悪意に満ちた態度に、絢乃は目を見開いた。

・・・卓海が何を言いたいのかはわからない。

だが卓海が、自分たちを非難しているのはわかる。

例え実の兄妹でなくても、自分と慧はずっと兄妹同然として育ってきた。

その絆を非難される筋合いなどない。

絢乃はカッとし、口を開いた。


< 415 / 438 >

この作品をシェア

pagetop