蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「・・・関係ないなんて、よく言えるな」

「・・・っ・・・」

「何度言えばわかる。お前はオレの道具だ。・・・オレを楽しませるための、な」


卓海は濡れた唇を指先で拭い、目を細めてくすりと笑った。

・・・その、色を帯びた黒い微笑み。

絢乃は呆然と卓海を見上げた。

『道具』・・・。

もう何度も言われている言葉なのに、なぜ今、こんなに心に突き刺さるのだろう。

卓海はやはり、自分を玩具としか思っていない。


・・・一体自分は何をしているのだろう。

卓海に言われるがままここに来て、こんなことをされて・・・


なんだか、自分がひどく情けなく思える。

視界がじわりと涙で歪む。

絢乃はとっさにぐいと腕を伸ばし、卓海の胸を突き飛ばした。

そのままくるりと踵を返し、廊下の方へと走っていく。


「・・・おい、絢乃っ!?」


卓海の声が背後から聞こえる。

しかし振り返ることなく、絢乃は廊下へと駆けていった。


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