蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「・・・っ、秋月・・・」


雅人は息を飲み、くいいるように絢乃を見つめる。

その透き通った氷のように美しい瞳が、切なげに歪められる。

・・・至近距離で香る、クールなグリーンノートの香り。

絢乃は気恥ずかしくなり、俯いた。

その瞬間。


雅人の手が、絢乃の頬に触れた。

はっと息を飲んだ絢乃の頬を両手で包み、ぐいと上向かせる。


「・・・・っ!」


───唇に、柔らかい感触。


絢乃は呆然と目を見開いた。

・・・至近距離にある、雅人の端整な顔。

長い睫毛、すっと通った鼻筋・・・。


まさか・・・。


頭が真っ白になる。

絢乃は茫洋としたまま、雅人の唇を受けていた。

・・・少しひんやりとした、柔らかい唇。

それは絢乃の唇に、羽のように何度も優しく触れた。

やがて唇がそっと外され、絢乃はぐいと抱き寄せられた。

逞しく、均等に筋肉がついた広い胸板。

< 420 / 438 >

この作品をシェア

pagetop