蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・絢乃」
耳に忍び込む、低く甘い囁き。
・・・腰が砕けそうになる、その声。
絢乃の名前を呼ぶ、その声。
絢乃は目を見開き、呆然と雅人を見上げていた。
「・・・話せ、絢乃」
「・・・っ、北條さん・・・」
「何があった?」
熱を帯びた声で、雅人は耳元に囁く。
絢乃は唇を震わせた。
・・・自分は今、雅人にキスされた。
一体、何がどうなっているのか・・・
突然のことに混乱する絢乃の唇に、雅人の唇が再び落ちてくる。
・・・幻ではない、と言うかのように。
その優しい感触に、絢乃は頭が溶けるような気がした。
───頭が混乱し、もう何が何だかわからない。
絢乃は雅人の唇を受けながら、その腕の中で呆然と立ち尽くしていた。
と、そのとき。