蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───15分後。
春美は雅人の口から出た思いもよらない話に、頭を抱え込んでいた。
雅人が絢乃を気に入っているというのはなんとなくわかっていた。
けれどそれが恋愛感情だとは、想像もしていなかった。
そしてそれ以上に、春美を驚かせたのは・・・。
「・・・北條さん」
「なんだ?」
「本当に・・・お辞めになるんですか? しかも社長になるために結婚って・・・」
言いながら、声が震える。
・・・まだこの話は、社内でもごく一部の人間しか知らないらしい。
そんな話をヒラの自分が知ってしまっていいのか、ということもあるが・・・。
「あの。・・・絢乃のこと、本当に諦めるんですか?」
「・・・」
「政略結婚、ってことですよね。絢乃はそのことを知ってるんですか?」
「いや、知らない。それは秋月には伏せておいてほしい」