蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
雅人はため息交じりに言う。
・・・その瞳によぎる、切なげな影。
春美は息を飲んだ。
と、そのとき。
ブルルッという音とともに、雅人の携帯が鳴った。
雅人は胸ポケットから携帯を取り出し、素早く開く。
「北條ですが」
『・・・・』
「・・・あぁ、わかった。帝国ホテルだな?」
『・・・』
「14:00でいいだろう。手配を頼む」
雅人は言い、パタンと携帯を閉じた。
ポカンとする春美の前で、雅人は少し笑って言う。
「・・・失礼した、杉沢」
「あの、今の電話って・・・」
「ああ。今週末、早速相手と会う。もうあまり時間がなくてな」