蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───16:00。
絢乃は春美とともに、1Fにあるタリーズコーヒーに入った。
タリーズコーヒーは濃いめの豆が特徴で、絢乃はよくコーヒーを豆乳で割ったソイラテを頼んでいる。
二人は窓際の席に向かい合って座った。
春美が聞きたいのは雅人とのことだと思うが、一昨日のことは正直、絢乃にもよくわからない。
・・・と思った絢乃の前で。
春美は絢乃が予想だにしていなかった話を始めた。
「・・・・え?」
───入店してから20分後。
絢乃はカタカタ震える手で、コーヒーカップをソーサーに置いた。
春美の口から出たのは、まるで予想外の話だった。
雅人が会社を辞める、ということ。
そして、縁談相手と結婚するということ。
「・・・実は、口止めされてたんだけどね。でもあんたには、言っておいた方がいいような気がして・・・」
春美は神妙な顔で言う。
想像すらしていなかった話に、絢乃はなすすべもなく、呆然と春美を見つめていた・・。