蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




慧はふらつく足取りで自室の方へと行こうとする。

絢乃はとっさに慧の腕を掴み、支えた。

そのままコートと上着を脱がせ、ベッドに寝かせる。

絢乃はすぐに体温計を救急箱の中から取り出し、熱を測った。


「38℃・・・」


慧が熱を出すことはめったにない。

───どうしよう。

絢乃は慌てた様子で、薬を飲ませるべくキッチンに水を取りに行こうとした。

そのとき。


慧の手が、絢乃の手をがしっと掴んだ。

・・・その、力の強さ。

まるで縋るかのようなその手に、絢乃はびくっと背筋を強張らせた。

慧の手は熱のためか、とても熱い。


「・・・ここに、いてよ・・・」


慧はうわ言のように言う。

熱で頭がぼうっとしているのか、その瞳は茫洋としている。

その白皙の頬も、首筋も、熱で赤く染まっている。



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