蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・お水と薬を持ってくるから。ちょっと待ってて?」
絢乃は言い、そっと慧の手を外した。
そのまま慧に背を向け、キッチンの方に行こうとした、その瞬間。
絢乃の腰が、物凄い力で後ろに引き寄せられた。
───背に当たる、固い胸板。
はっとした絢乃の首筋に、慧の吐息が触れる。
「・・・離さないよ、・・ヤ」
掠れた声。
氷のように固まった絢乃を慧は後ろから抱きしめ、うわ言のように言う。
「・・・どこにも行かさない。他の男のところになんか、行かせない・・・っ」
その声によぎる、熱情。
そして・・・狂おしいまでの切なさ。
絢乃の全身を包み込む、熱。
微かに香る甘いウッドノートの香りに、絢乃は一瞬、頭がぼうっとするのを感じた。