蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「おれは絶対に、・・・お前を、離さない・・・っ」
小さな叫びとともに。
慧の腕から力が抜け、慧の体はずるっとベッドに横たわった。
「・・・っ、慧兄・・・」
絢乃はしばし呆然とした後、慌てて慧の体に布団を掛けた。
慧は苦しげに胸を上下させている。
・・・今、慧は誰の名前を呼んだのか・・・
『サヤ』と聞こえた気もする。
角倉沙耶だろうか。
・・・けれど・・。
絢乃はぶんぶんと首を振り、踵を返した。
今は、そんなことを考えている場合ではない。
・・・まずは、薬だ。
絢乃は慌ててキッチンの方へと走り出した。