蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「秋月さんって確か、加納さんと同じ大学を出てるのよね?」
「・・・う、うん」
「じゃあ昔から、加納さんとは知り合いだったの?」
どうやら、さっきの卓海との会話を見られていたらしい。
なんだか面倒くさいことになりそうな予感がする。
と内心思った絢乃に、香織はぐいと灰皿に煙草を押し付け、言った。
「ま、どうでもいいけど? ・・・はっきり言っておくわね、あたしは卓海さんを狙ってる」
どことなく挑戦的な香織の言葉に、絢乃は息を飲んだ。
『卓海さん』て・・・
曲がりなりにも自分の課の課長を、ファーストネームで呼ぶとは・・・。
とちょっと見当違いのところで驚いた絢乃に、香織はくすりと笑って言った。
「だからこれ以上、卓海さんと仲良くならない方がいいわよ? あたし、嫉妬深いから」
「・・・はあ」
「言いたいことはそれだけ。じゃあね」
言いたいことを言い、香織は絢乃の脇を通り抜け、休憩スペースを出て行った。
突然のことに、絢乃は唖然とその背を見つめていた・・・。