蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
3.恐怖のトマト
その日の夜。
絢乃はリビングのソファーに埋もれるように寄りかかり、ぼーっと天井を見上げていた。
リビングにはアイボリーの革張りのローソファーが壁に沿って置かれ、その対角に42インチのテレビが置いてある。
リビングの家具は木目のウォールナットで揃えられており、部屋のあちこちに観葉植物が置かれている。
リビングに限らず、共用スペースの家具は絢乃と慧で選んだのだが、観葉植物は慧が花屋の店先で気に入ったものを随時購入し、適当な場所に置いている。
絢乃はぼんやりと、天井からテレビ脇の観葉植物に視線を移した。
・・・なんだか、今日は激しく疲れた。
ロジでの失敗と言い、香織の件といい・・・
どうやら、事件は起きる日にまとめて起こるらしい。
「・・・どしたの、アヤ。魂飛んでるよ?」
「・・・」
兄にそう言われるとは、自分は相当重症らしい。
特に、雅人に厳しく叱られたことが自分でもショックだったのかもしれない。
あれだけ強く叱られたのは、OJTの時以来だ。
あれから雅人にメールを送ったが、定時の時点ではメールを開いた形跡はなかった。
あのままロジから別の用事で外出しているらしい、と聞いているのでメールを見てないのかなーとは思うが・・・。
慧は魂が抜けた様子の絢乃の前に、トンとカフェオレを置いた。