蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
唖然とした絢乃に、慧はいつものにこやかな笑顔で言う。
「トマトがヘリを墜落させたり、パトカーを乗っ取ったり。トマトの無限の可能性を感じる、そんな映画だよ」
「・・・?」
「ま、とりあえず見てみよっか?」
慧はどことなく楽しげな目でテレビの画面を見つめている。
何かの比喩だろうか、と思って画面を眺めていた絢乃の前で、やがて映画が始まった。
───最初の場面はアメリカのとある家のキッチン。
台所の排水溝にトマトが転がり落ちたかと思ったら、そのトマトが突然、嗤いながら主婦に襲い掛かった。
そしてトマトは文字通り、主婦を惨殺した。
どうやらトマトは人間に喰われ続ける運命を呪い、逆に人間を喰ってやろうと考えたらしい。
トマトの行為はさらにエスカレートし、海水浴に来ていた若者を襲い始める。
アメリカ政府はついに、トマト対策チームを結成し、対策に乗り出した。
・・・って。
「慧兄! 何なの、この映画!?」
と叫んだ絢乃に。
慧はくすりと笑い、言った。