蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「だから、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』だよ。殺人トマトの映画」
「・・・ってこれ、B級通り越してZ級だよね?」
絢乃はあんぐりと口を開けて画面で転がっているキラートマトを見た。
・・・トマトだ、どう見ても。
しだいに巨大化していき、ハリボテ感がそこはかとなく漂っているが、これはどう見てもトマトだろう。
慧は自分のカフェオレを一口飲み、目を細めた。
「噂には聞いてたけど、すごいな。想像以上だよ」
「・・・ってか、何の仕事受けてンの、慧兄・・・」
「でもおれにしてみれば、トマトが人を襲うことより、この映画を四作目まで作った人間の狂気の方が恐ろしいね」
「え、これ、四作目まであるの!?」
絢乃は思わず叫んでしまった。
・・・信じられない。
でもあまりにバカバカしすぎて、ちょっと見てみたいと思ってしまう。
と思っていた絢乃の視線の先で、アメリカ軍がトマトに惨敗した。
あのアメリカ軍が、である。
もはや何をどう突っ込んでいいのかわからない。