蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
洗面所に入った絢乃は鍵を閉め、手早く服を脱いだ。
夜の、少しひんやりとした空気が素肌を包みこむ。
・・・二人が住んでいるこのマンションは2LDKで、玄関を入るとすぐに洗面所やトイレ、風呂などのランドリースペースがあり、その横を抜けるとリビングに入る。
このマンションはもともと母の資産だったが、母は絢乃が大学の時に仕事でアメリカに行くことになった。
そのとき、このままでは税金やら手続きやらがいろいろ面倒くさいからと、母はこのマンションを慧に譲り渡した。
その際に、残っていたローンは慧が一括で返済した。
つまり今、このマンションは名実ともに慧の資産となっている。
「・・・は~・・・」
絢乃は体を洗った後、湯船に浸かった。
───二人で住むには十分な広さの、このマンション。
今、絢乃はこのマンションに居候しているような状態だ。
もし将来、慧が結婚し妻や子供ができたら、絢乃はこのマンションを去らねばならない。
今のところ、一人暮らしも充分にできるほどの給料を貰えているので、それは可能なのだが・・・。
「・・・結婚、か・・・」