蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】



洗面所に入った絢乃は鍵を閉め、手早く服を脱いだ。

夜の、少しひんやりとした空気が素肌を包みこむ。

・・・二人が住んでいるこのマンションは2LDKで、玄関を入るとすぐに洗面所やトイレ、風呂などのランドリースペースがあり、その横を抜けるとリビングに入る。

このマンションはもともと母の資産だったが、母は絢乃が大学の時に仕事でアメリカに行くことになった。

そのとき、このままでは税金やら手続きやらがいろいろ面倒くさいからと、母はこのマンションを慧に譲り渡した。

その際に、残っていたローンは慧が一括で返済した。

つまり今、このマンションは名実ともに慧の資産となっている。


「・・・は~・・・」


絢乃は体を洗った後、湯船に浸かった。

───二人で住むには十分な広さの、このマンション。

今、絢乃はこのマンションに居候しているような状態だ。

もし将来、慧が結婚し妻や子供ができたら、絢乃はこのマンションを去らねばならない。

今のところ、一人暮らしも充分にできるほどの給料を貰えているので、それは可能なのだが・・・。


「・・・結婚、か・・・」


< 55 / 438 >

この作品をシェア

pagetop