蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
───二人だけの生活になって、約7年。
母が仕事でアメリカに行って以来、慧はいろいろと絢乃の面倒を見てくれている。
母代わりでもあり、父代わりでもあり、そして頼れる兄でもあり・・・
慧がずっと傍にいてくれたおかげで、絢乃は寂しい思いをせずに済んできた。
・・・けれど・・・。
いずれ、自分も兄もそれぞれの相手を見つけて、新しい家庭を作るのだろう。
今はこうして二人で暮らしているが、これが永遠に続くわけではない。
・・・そう思うと、なんだか寂しい気もする。
絢乃はぶくぶくと鼻まで湯に浸かった。
今は慧が在宅で仕事をしているため、平日の家事はほとんど慧がこなしてくれている。
土日は二人でやっているが、全体的な比率は圧倒的に慧の方が多い。
申し訳ないから折半にしよう、と何度か絢乃は言ったが、そのたびに慧はさくっと断った。
『お前が帰ってくるのは早くても19時だろ? それから家事なんてやったら、倒れちゃうよ、お前』
と言って、頑として譲ろうとしない。