蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




「・・・」


慧が歩むはずだった道、慧が絢乃のために犠牲にしたものの大きさ・・・

それを考えると、いつかは慧にこれまでの恩返しをしたいと思わずにはいられない。

けれどどうすれば恩返しができるのか、まだわからない。

そうこうしているうちに、あっという間に3年が過ぎてしまった。

このままではまずい、と思ってはいるのだが・・・。


絢乃にとって、今の生活はモラトリアムのようなものだ。

二人で面白可笑しく、仲良く暮らす日々。

けれどこの生活は、永遠ではない。

そろそろ自分も、兄離れしなければならない。

・・・恐らく兄も、そう思っているだろう。

絢乃はひとつ息をつき、湯船からゆっくりと立ち上がった。



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