蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
4.神のチカラ
7月。
絢乃は資料を片手に、データベースの設定内容をチェックしていた。
5月に雅人に頼まれて物流システムの受注データの調査を行ったのだが、今回、そのデータを格納する部分に変更が加わることとなった。
もともと、受注のデータは『商品マスタ』と呼ばれる商品ごとの連番リストに基づいてデータが作成されている。
今回、その『商品マスタ』自体が少し変わることになったため、受注データも多少、構成を変える必要が出てきたのだ。
「・・・うーん、これじゃあレスポンス悪くなりそうだなー。かといって別データにするのもなぁ・・・」
雅人から渡された資料を見ながら、絢乃はうーむと首を傾げた。
・・・ちなみに。
『商品マスタ』はグランツ本部から提供される基幹データのため、これが変わると、影響はほぼ全てのシステムに及ぶ。
今月は物流システムの対応を行うが、来月は貿易システムの対応も行わなければならない。
・・・忙しくなりそうだ。
絢乃はしばし資料を眺めた後、パチパチとキーボードを叩き始めた。
データベースの構成を変更する前に、どう変更するのか? を設計書としてまとめ、雅人に提出しなければならない。
絢乃はデータベースをいじること自体は好きなのだが、こうした書類的作業はあまり得意ではない。
絢乃ははぁぁとため息をつきながら、設計書を作成していった。