蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「・・・お、絢乃ちゃん! いいトコロに来たね~」
突然横から声を掛けられ、絢乃は足を止めた。
見ると、第二開発課のドアが半開きになっており、そこから卓海が顔を覗かせている。
卓海の足元には何やら紙袋のようなものが置いてあり、その中にはいろいろなパンフが入っている。
・・・そういえば、第二開発課は今日の午後、品川で貿易業者向けの情報セミナーを開催するらしい。
第二開発課で設計・作成している貿易システムは、社内で使用するだけではなく、同じような業種の会社に対し販売も行っている。
足を止めた絢乃だったが、突然卓海にぐいと腕を掴まれ、第二開発課の部屋の中へと引きずり込まれた。
息を飲み、はっと顔を上げた絢乃に、卓海はいつもの極上の笑顔で言う。
「・・・絢乃ちゃん。これから時間ある?」
「・・・え、え?」
「あるよね。あるって顔してるよ。じゃあ決定だね」