蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】




見ると。

廊下の隅で、香織と卓海が何やら話をしている。

───香織と同じ格好をしているのに、この差はなんだろう。

色気の差というか、女子力の差というか・・・。

絢乃はなんだか恥ずかしくなり、卓海に気付かれないように忍び足で会場に入ろうとした。

・・・が。


「・・・ちょっと待った、絢乃ちゃん!」


後ろから声を掛けられ、絢乃はびくっと背筋を固まらせた。

・・・うう、見ないで欲しいのに・・・

などと絢乃が思っていることは露も知らない様子で、卓海は驚いたように目を丸くした。


「へぇ、・・・その服、絢乃ちゃんが着ると、そうなるんだ?」

「・・・」


───はっきり言って褒められていない。

服に着られてしまっていると、自分でもわかっている。

がくりと肩を落とした絢乃だったが、ふわりと近くで香った甘いフゼアの香りに息を飲んだ。

いつのまにか、首の後ろに卓海の手が回っている。

息を飲む絢乃の首の後ろで、卓海の指が器用に絢乃の髪をまとめていたゴムを引き抜いた。

肩から背中にかけて、長い黒髪がばさっと広がる。


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