蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
卓海はその完璧な形の唇に、ゆっくりと笑みを刷いた。
・・・コンパニオンとして連れてきたのに、この状況だ。
香織は面白くなさそうな目で絢乃を見ているが・・・・
そもそも、絢乃と香織とでは技術者としての根本的な部分が違う。
見ている世界が違うと言ってもいい。
───やはり、慧の妹だ。
絢乃はどうやら、自分のことを同じデータベース技術者として尊敬しているらしい。
・・・が。
「・・・尊敬、ねぇ・・・」
くすり、と卓海は唇の端で嗤った。
女の前ではめったに見せない、その黒く歪んだ微笑み。
卓海は壁に寄りかかったまま、質問攻めに遭っている絢乃をどこか楽しげな目でじっと見つめていた・・・。