蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
6.過保護な兄
その日の夕方。
絢乃は疲れ切った顔で電車に揺られていた。
・・・あれから、絢乃は展示ブースでひたすら質問攻めに遭った。
休むこともできず立ちっ放しで、足が痛い。
絢乃は吊革の手摺にぶら下がるように電車に揺られた後、宮崎平の駅で降りた。
ふらふらと改札を出、マンションへと歩いていく。
マンションの玄関を入り、エレベーターで5階に上がって鍵を開ける。
「・・・ただいまー・・・」
と声を上げてみたが、返事がない。
絢乃は首を傾げ、靴を脱いで玄関へと上がった。
見ると、玄関に置いてあった慧の革靴がない。
・・・ということは、慧は出かけているのだろう。
慧は基本的に在宅だが、たまにクライアントのところに出かけることもある。
となると、今日は私が夕飯を作らなければ・・・
と思った、その時。