蜜愛シンドローム ~ 陥溺の罠 ~【完】
「アヤ、今日は夕飯どうする? たまには外食にしようか?」
「えっ?」
「ほら、お互いスーツだしね? たまには美味しい店に行ってみようよ?」
慧はその美しい目を細めて言う。
・・・こんな笑顔で言われたら、嫌とは言えない。
たまに兄はそれを狙ってやってるのではと思うこともあるが、兄はそこまで複雑な性格ではない。
・・・と思う。
しかし無意識だともっとタチが悪いような気も・・・。
絢乃はこくりと頷き、慧の後に続いて玄関を出た。
15分後。
二人はタクシーで5分ほど行ったところにある、イタリア料理屋の中にいた。
こじんまりとした綺麗な内装のお店で、店の中にはオリーブとガーリックの美味しそうな香りが漂っている。
慧はメニューを見、二人分のコースを手早く注文した。